ながびく咳で困っている方が多くいます。なかには重篤な疾患が隠れていることがありますが、そうでなくても咳自体が本人にとっては苦痛です。咳が続くと仕事に差し支えますし、人と集まることが困難になります。ひどい咳では骨折したり、筋肉が断裂することすら有ります。2012年5月に咳嗽に関するガイドライン第2版が日本呼吸器学会から発刊されました。今回のバージョンアップはガイドラインの実用性向上が目的になっております。より使用しやすくなっております。
胸部Xp写真や胸部CTは呼吸器診断の基本です。放っておいてはいけない重篤な疾患である肺癌や結核は見つけることができます。また、肺気腫、慢性気管支炎、間質性肺炎なども診断できます。これらの疾患は見つけたら直ちに治療しましょう。
まず、持続期間から咳を分類していきます。
①急性咳嗽 | 3 週間までの持続する咳 |
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②遷延性咳嗽 | 3~8週間の持続する咳 |
③慢性咳嗽 | 8週間以上の持続する咳 |
①の3週間までの咳は感染性咳嗽の可能性が高いと考えられます。
咳嗽開始後3週間以内であっても、②③の初期状態をみていることもありますが、以下のいずれかの所見が当てはまれば感染性咳嗽を疑います。
咳の状態がピークを越えているおり、収束しつつある場合には鎮咳薬などの対症療法で経過をみます。ウィルス性の上気道感染症では咳が咳をよぶ状態を除けば鎮静していきます。咳がまだ続いていきそうな場合は鎮咳薬と同時にマイコプラズマや百日咳、クラミジアをうたがいクラリスなどのマクロライド系抗生物質を投与します。また、胸部X線写真や血液検査、喀痰検査で原因の探索が必要になります。肺炎や結核などを想定します。
咳嗽診断の原則
問診により明確な誘発因子(薬剤服用、喫煙など)が認められる場合はそれらの除去をおこないます。降圧剤の一種でおこります。タバコを自分で吸わなくても副流煙による刺激も原因になります。
咳嗽以外の自覚症状(喘鳴など)、聴診によるラ音の聴取や胸部X線写真上の異常陰影が認められる場合はそれらの異常に対する特異的な検査や治療を進める。
喀痰ありの場合には副鼻腔気管支症候群が考えられます。マクロライド系抗菌薬を8週間投与します。
喀痰がない遷延性・慢性咳嗽があります。咳が長引いて困っている呼吸器科を受診される方に多いタイプの咳嗽です。咳喘息・アトピー咳嗽、胃食道逆流症、感染後咳嗽が考えられます。
咳喘息・アトピー性咳嗽の特徴は症状の季節性があります、毎年同じように時期に始まり一定期間後におさまる。夜間、明け方に発作が強い。受動喫煙、温度変化などで増悪する。アトピー性素因がある。白血球の一部である好酸球が増加したり、抗体の一部のIgEが上昇していることがある。このような症例では喘息の治療をおこなうと改善することが多い、治療開始後2週間くらいで改善してきます。
胃食道逆流症は最近とみに増えています。従来は日本で少ないと言われていいたのが今ではよく見る疾患の1つになっています。特徴は胸焼け、呑酸を呈します。胸痛、咽頭部の違和感、食後の悪化が特徴です。胃酸を止める薬剤を8週間使います。
感染後咳嗽は炎症は治まったが咳だけが残っている状態です。対症療法を2週間続けます。この場合はすっきり治った感じがしないのですが、なんとなく治ったという経過をとります。
咳が長引いた時にはいろんな原因があります。危険な疾患から先に治療または除外していく必要があります。